若女と節木増

 若女と節木増の歴史的な成り立ちについては他に譲ることにして、ここでは両者の表情と舞台での使い方の違いについてひとこと。

 左の若女は能「六浦」で後シテ 楓の精として、右の節木増は能「紅葉狩」で前シテ 紅葉見物の上臈として出演しました。

 女面を打つ場合、表の表情と裏の心理の両義性があることを念頭に置きます。能「六浦」では楓の精のように草木の精としてのたわやかさと「功成り名遂げて身退くは 天の道と心得ず」と語ったように紅葉(コウヨウ)の中で楓としての立場を貫く強い思いが表と裏として表現されることが良いですし、能「紅葉狩」では鬼女であることを隠して優美な女性として人間を篭絡するという人間の女性と鬼人という両面を前シテで使う面では表裏の表現として内在していないと面白くないかもしれません。

 楓の精に「若女」を紅葉見物の上臈として「節木増」を使って頂きました。

 両方の舞台での写真を載せておりますが、能面の写真とともにこれら女面が持つ表裏の表現をご覧ください。